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LSEで学ぶことの価値とは何か

2011年07月15日 16:49

さて、いよいよ夏休みも中盤に入ってきました。試験もすっかり終わり、
残るはディサテーションです。学生達は8月末の締め切りを意識しつつ、
徐々にエンジンをかけていっているというところですね。図書館も試験シーズン
ほどは混んでいないものの、それなりに人がいる状況です。

このエントリーでは、LSEの教育の価値について考えてみようと思います。
勿論、他のイギリスの大学と共通の部分もあると思いますし、僕が日本の大学の
現状を知らない(もう10年以上前に卒業してますから)というのもありますので、
偏ったものの見方の可能性もありますが、そこはご容赦を。

僕がこの一年を過ごしてみて感じた、LSEのマスターレベルの教育環境の強みは
大きく分けて2つあります。


① 徹底的に自分で考えさせる

これまでのエントリーでも書いてきましたが、大量のリーディングが
与えられ、その上で、与えられるものを超えてオリジナルの思考をアウトプット
することが常に期待されます。反面、そのプロセス、つまり、どのように文献を
読み解き、どう整理し、自分のアウトプットとして行くかは殆ど学生に
委ねられています。

如何に、それが如実に現れていると感じる点を列挙してみますね。

■ いわゆる教科書を使わない。リーディングの主体は学術論文。
■ 広範なトピックを扱うのに、全体像やトピック間の関係をあえて説明しない
■ 教員が、学生の問いに対して、視点は示しても解を与えない
■ 常に、正解は無い、どう論じるか、の問題である、と言うスタンスで
  エッセー/試験が行われる

と言ったところでしょうか。

教科書を使うコースも全く無くはないのですが、多くの場合、学術論文や
ケーススタディが主体でした。この違いは何かというと、教科書は、様々な
ものの見方や理論が、整然と整理されているのに対して、学術論文では、
もちろんそんなことは行われていません。それぞれの論文がそれぞれの立場で
事象を分析し、検証し、語っている訳で、それらをどう相対的に位置づけるのか、
また、様々な学説の強みと弱みをどう理解するか、と言った点は基本的に
読み手に委ねられます。

二つ目の点はこれと関連しているのですが、僕が取った中で特に顕著だったのは、
MG426 Organizations in Economy and Societyでした。
このコースは通期のコースで、経済学、社会学、経営学からかなり幅広いトピック
を取り扱うのですが、各トピックや、そこで扱われるコンセプト群がどのように
関連し、全体像を形作っているのか、は最後まで明確には示されません。

恐らく、それは教員が示すものではなく、学生が自分で構築するべきものだ、
と考えて、あえて放置しているのだと思います。これは、僕の同級生達からは至って
不評でして、上半期が終わった時点、あるいはもしかすると下半期の途中でも、
コースに強い不満を感じている同級生はかなり沢山いました。何をやらされている
のか、さっぱり分からん、意味があるのか、という不満ですね。

しかし、試験の準備期間を経たのちに話していると、「このコースは素晴らしかった。
今になってみると良くわかる」というコメントが続出していたのです。
自分を振り返ってみてもそうですが、試験の準備を通じて、一つ一つの論文の内容を
咀嚼し、全体を俯瞰して統合するプロセスを自分でくぐり抜けることで、
ようやく、自分なりの深い理解に至る、という設計になっていました。

最後の二つの点も、こうしたスタンスを補強するものです。あくまでも、生徒が
自分で考えて、自分で論を立てる、という点で全体が一貫している印象があります。

ただ、これを、期中の生徒の不満を放置して、最後まで自分でやりきらせる、
という教育方針には、なかなか凄いものを感じます。
実際問題、色々な大学ランキングを見ていて気づくのは、LSEの学生満足度の
低さです。一方で、就職市場ではかなりな強さを誇っています。

様々な要因があるのでしょうが、恐らく、

「困難なお題を与えて、放置して自分で考えさせる」

 → 生徒は不満。もっと導いてほしい、効率よく学ばせてほしい
   と考える。時にはついていけない人も。

 → しかし、自分で考える力、批判的、統合的に思考する力、
   思考の持続力は間違いなくつく。企業からは魅力。

と言うことになっているのではないかと思うのです。


昨今の東大の改革に関する施策でも、「タフな東大生を育てる」というのが
改革の一つの柱になっていますが、知的タフさ、と言う点では、この、
厳しい課題を与えてあえて放置する「放置型教育スタイル」がかなり強い意味
を持っているのではないか、と感じています。

上にも書きましたが、それが何となくそうなっているのではなくて、意志を持って
敢えて選択した結果として、維持されている、ということがミソだと思います。
恐らく、長年学生からの不満の声は常にあるのだと思うのですが、
それでもなお、思想としてLSEの教育はこうなのだ、という信念が徹底されている
点に、すごみを感じます。



② 生徒の質の高さと多様性

これは、まあ論じるまでもないことではありますが、やっぱり大事です。

僕はもう30代中盤ですから、同級生のほとんどは20代前半~中盤と、かなりの
年下なのですが、スタディグループ等をやっていても、非常に鋭いアイデアや
突っ込みがかえってくることも多く、唸らされることがしばしばありました。

また、自律/自治という点でもかなりレベルが高く、上記のような放置される
状況下でも、それなりに自分を律して、勉強し続け、与えられたもの以外の論文も
自分で調べて読み、他の学生に考えをぶつけ、理解を深めていく、という姿勢は
感心するところが多かったです。
確かに考えてみれば、放置スタイルを取る以上、学生の質とその間の相互作用に、
学習はかなりの度合い依存している訳です。


多様性に関しては、勿論一般論として、いろんな国からの学生がいて面白いという
話はあるのですが、それ以上に、学んだ理論に対して、実際に自分の国では
こうなっている、自分の国の特徴はこういう風に解釈できると思う、といった会話が
できる点に価値があるのだと考えています。

例えば、僕が取っていたCross Cultural Managementと言うコースには、
同じプログラムからオランダ人、ドイツ人の同級生も参加していたのですが、彼らと、
実際問題オランダ人はどのように物事を捉えるのか、ドイツ人はどんな状況に
どう反応するのか、具体的に日本ではどのような現象が起きるのか、といった
ことを、かなり議論しました。ある意味、理論に肉付けしていく作業というか、
現実とつなぎ合わせていく作業をしていた、と言えると思います。

マネジメントのグローバル化と、その反面での、依然として世界中で文化や社会制度、
ビジネスの成り立ちに大きな違いがある、という現実を合わせて考えると、こうした、
「理論を学ぶ」+「様々な国の実情を踏まえて解釈し、考察する」と言うことの
価値はかなり大きなものがあるように感じます。勿論、ビジネス経験がある学生は
限られていますから、限界はあるのですが。


まとめると、「放置型教育スタイル」と「質が高く多様な学生群」がLSEの強みだ、
と言う話です。そして、それは恐らく、マネジメントに限った話ではなく、
どのプログラムでも同じような特徴があるのではないかと感じてます。

前者は、粘りよく自分で考え、枠組みを自ら生み出す力につながる訳で、
人事組織コンサルタントとしての視点で考えると、企業はそりゃ欲しくなるよな、
と思います。後者は、グローバル化しつつ、多様性も強く存在する今日の社会に即して、
理論と現実をつなぎ合わせる経験を可能にしてくれます。これもまた、
これから社会に出て行く学生には、非常に良い準備を与えてくれるように感じます。

今考えると、もっと早く来ておけば良かったなあ、と、
同時期に留学してきている若い留学生達がうらやましくなることもあります。
まあ、勿論、時代が違った、とか、そんな問題意識は無かった、ということも
あるので、たらればの話をしてもしょうがないのですが。

と、言うことで、今回は、LSEは中々素敵なところですよ、サバイバルは大変ですが、
というお話でした。
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コメント

  1.   | URL | -

    LSE留学を考えている者です。
    いつも拝見させていただいています。
    とても参考になるので、ぜひ卒業後もこのブログはそのままでお願いします。

  2. take | URL | Kkn.xkgs

    はじめまして

    Katsuhikoさん
    初めまして。takeと申します。
    来年LSEへの留学を考えているものです。
    ブログとても参考になります。今後質問させて頂くこともあるかと思いますが宜しくお願い致します。

    ※ブログの始めの方を見て驚いたのですが、katsuhikoさんは会社の先輩なんですね。(私は半年前に退職して今は違う職場にいますが、当時はHR領域を担当していました。)

  3. Katsuhiko_Y | URL | -

    Re: はじめまして

    あら。コメントありがとうございます。
    なんと、会社の後輩の方がみつけてくださるとは恐縮です。
    ぜひお役立てくださいませ。

    僕はいよいよ1年の留学を終えて、いよいよ帰国ですが、
    1年は早いようで、いろいろと学べる良い時間でした。

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