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コースの振り返り)International and Comparative HRM

2011年04月20日 08:20

このコースは、その名の通り、国際的な人事論を取り扱います。
Comparative(比較)とタイトルにある通り、世界の国々の間で
どのように主要な人事システムやそれを支える社会制度が異なるか、
ということに力点をおいたコースとなっています。

まず、雇用関係の中心である職務デザインには、大きく4つの基本
タイプがあるというところからスタートし、国によって中核的に
採用されているタイプが大きく異なる、そして、それらの4タイプが
教育、報酬、人材フローなど、人材マネジメントのあらゆる面に影響を
与えている、また、国としての労働法制や労使関係のあり方と
そうした職務デザインのあり方は密接に関連している、といった
テーマを取り扱いました。

また、 国際的な人材流動性の高まりがどのような仕組みで
生じているのか、また、グローバルサプライチェーンをマネジメント
する上での人材面での課題とは何か、といったテーマについて
議論がなされました。

4つのタイプは下図に示した通り、
「業務範囲の設計思想(Task/Function)」×
「業務内容の設計思想(Production /Training)」の
マトリックスで成り立っています。

Employment relations


例えば、日本の場合、個人ごとの職務の範囲はFunction(役割)
ベースで設計されており、比較的個人の業務の境界があいまいで、
重複を持たせておくのが普通ですが、ご存知の通り、アメリカ等
では 個人の責任範囲がTask単位で 、明確に定義されており、
また、個人間の重複がないようないわゆる機械的な設計が行われます。

このことは文化的にみても合理性があり、collectivismの国では、
個人の目標よりも集団の目標を達成することに意欲を感じる傾向が
あるため、協同を促しやすい仕組みの方がフィットしやすいと
言えますし、individualismが強い国では、個人の責任と、
アウトプットに対する報酬が明確でない状況を非常に不快に感じる
傾向があるため、業務設計は明確な方がフィットしやすいです。

また、業務内容の設計思想に関して言えば、日本の場合は、
個人の業務内容は業務プロセス設計が行われた上でそこに人を
はめ込む形で設計がなされますが、例えばドイツなどの場合は、
マイスター制度などの名残として、職業教育で一定のスキルを
育成され、認定された人材ありきで、彼らのスキルを活かすことを
前提に職務設計がなされます。

日本からだと想像がつきにくいので補足しますと、ドイツは、
ホワイトカラーの業務も含めた非常に多くの業務に公的な資格が
設定されており、資格が無いとほぼその業務には付けない、
また、逆に同じ資格であれば、どの会社で働こうが報酬はほぼ
同じ、さらに、多くの企業がそのスタンダードにあった初期教育を
アプレンティス(見習い社員)制度という枠組みで提供している、
という労働市場システムが採用されています(産業単位での
企業組合や、労働組合、労働法制の組み合わせによって
担保されているそうです)。なので、スキルを活かすことを
前提に職務設計をした方が、効率が良くなるようです。

この話は、国によって、主要な職務デザインのありようが違い、
多くの人は支配的な職務デザインに慣れているため、その国の
デザインに合わせた人事システムを採用した方が、企業としては
コミュニケーションコストが下がりやすい、という話につながります 。
上記の通り、報酬設計の有り様や、教育のあり方、人事制度の
構造なども、これだけで決まる訳ではもちろんありませんが、
こうした基本的な枠組みの影響をかなり受けるようです。

ここから得られる学びは、私が日本を離れる前にも、グローバル
人事領域では半ば定説になりつつありましたが、やはり世界中で
同じ人事システムでやりたい、というのはかなりの無理がある、
ということです。もちろん、業務特性との相性はありますし
(例えば、研究開発にはタスク型の業務設計は合いにくい)、
支配的な職務デザインも流動します(例えば、アメリカでも70年代
以降に自動車産業を皮切りに、多能工化、チームワークの導入などが
行われ、過去と比べれば広い業務設計が主流になっている)ので、
一律では考えられる訳ではありません。業務上の合理性と、進出先の
支配的デザインとの整合性とどちらを優先するか、という話でも
ありますし、何を共通化して、何を共通化しないか、という設計が
重要だ、ということでもあります。

国際的な人材の流動化に関して言えば、上述のような国ごとの
職務デザインの違いを乗り越えて人が流動する背景には、国際的な
標準化と、国単位の需給問題があるようです。つまり、IT業界のように、
ソフトウェア言語が世界中どこに行っても同じであったり、
会計業界のように世界中で会計基準が統一されつつあったり、といった
ことが進んでいる業界 、あるいは、医療サービスのように、
国単位で需要と供給のバランスが崩れてしまった(例えば日本でも
介護の人材をフィリピンから、といった取り組みがありますよね)
ケースで主に流動化は起こるようです。こうした流れを支えるために、
送り出し元の人材企業、受け入れ側の人材企業、適応のための教育機関、
といった複数層からなるサプライチェーンが形成された、
というのがIT産業などでのこの10年くらいでの大きなトレンドだ
というような議論がなされました。

このコースは、日本の人事の有り様を、他の国の有り様と比較しながら
俯瞰する、と言うことができた、と言う点で非常に実りの多い
内容でした。
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コースの振り返り)Enterprise development

2011年04月20日 08:00

さて、先日はOrganizations in Economy and Societyの振り返りを
行いましたが、今回はもう一つの必修コース、Enterprise development
について振り返ってみようと思います。

このコースは、学生5人でチームを作り、ベンチャー企業の
立ち上げ案を考えていくという、LSEでは非常に珍しい、かなり
実践寄りのビジネススクールのコースのような内容になっています。
とはいえアカデミックな教育方針が売りのLSEのプログラムですので、
経営学における関連領域の研究についてリサーチすることも同時に
求められます。

各チームは5人で構成され、各自が リーダー、マーケティング、
ストラテジー、人事、ファイナンスを担当することになっています。
私のチームは、アメリカ、ペルー、イタリア、ドイツというかなり
多様性の高いチームになりましたが、その中で経験があることもあり、
人事を担当しました。

授業としては、毎週1時間半の授業があり、アントレプレナーにおける
戦略やマーケティングといった各領域の主要な理論や、また、
企業成長のステージ、起業におけるネットワークの役割等々のレクチャー
が行われました。

メインの講師は、シリコンバレーで長年コンサルティングをやってきて、
自らも企業を経験しているベテランコンサルタントが担当し、
さらに、各専門分野の教授が加わる、という混成チームで行われています。
加えて、外部の講師として、ベンチャーキャピタリストや、
起業家向けに投資家向けプレゼンのトレーニングをしているコンサルタント
等を招いたワークショップが行われました。

これらのインプットを活かしつつ、各チームが自分たちでビジネス
アイデアを考え、市場調査をし、具体的な事業設計をしていく、
という、いわゆる新規事業企画、と言われる業務と似たような活動を、
グループワークとして自分たちで進めていくことになります。

スケジュール的には今学期の初頭から本格的にグループワークを開始
という感じです。そして、6週目~10週目にかけて、各役割の
プレゼンテーションとエッセーの提出があります。

例えば、人事は9週目がプレゼンとエッセーの提出でしたが、
エッセーでは、いわゆるHuman Resource Managementに関する
諸理論および、自分たちのビジネスアイデアに関連する業界における
人事の主要トピック、そして起業プロセスにおける人事の主要課題
といった点についてリサーチを行い、それらを自分なりに総合し、
論文としてまとめることが求められます。

そして、その上でプレゼンでは、それらの理論に立脚しつつ、
自分たちのビジネスではどのような人事政策を行っていくのか、
といった点を考え、プレゼンする、といった内容です。

個人的には、仕事でやっていたこととの延長線上でもあるため、
比較的楽なコースでしたが、今までお客さんとしてあまりお手伝い
をしたことが無い業界をビジネスアイデアにしたため、あまり
考えたことの無い組織設計や人事上の課題を考える機会になりました。
また、小規模なスタートアップ企業の人事課題について論文を読み、
考える機会になった、という点で得るものがありましたね。

また、10分間にそれなりのコンテンツを煮詰めて、英語で
プレゼンをする、というのは中々の挑戦でした。当然、
メモをみながらしゃべる訳にはいきませんし、質疑もあり、
その内容まで含めて採点されるため、中々緊張感の高い場になりました。

結果としては、プレゼンは英語が達者な同級生を押さえて、
無事ベストHRプレゼンに選ばれました。また、エッセーも、採点される
エッセーとしては、ついに初めてディスティンクション(4ランク中、
最高級の評価)を貰えましたので、コンサルタントとしては面目を
なんとか保てたかな、というところです。

今後は、グループとしての最終プレゼンと、ビジネスプランをまとめた
グループレポートの提出で、この授業は終了です(試験はありません)。
最終プレゼンでは、ベンチャーキャピタリストがゲスト審査員として
参加し、優勝チームには賞金および、彼らが行っているコペンハーゲン
での若手起業家向けワークショップへの参加券が与えられるということで、
私自身はそれほどでもないですが、同級生達は張り切っています。


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