--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本の”改革”について考えた。

2011年01月31日 02:46

突然ですが、Variety of Capitalismという考え方をご存知でしょうか。
資本主義といっても、日本のそれとアメリカのそれは全く違う、という
ことを構造的に研究したものなのですが。

その学派の中では、資本主義は大きく、Liberal Market Economics (LMEs)
と、Coordinated Market Economicsという大きな二つの類型にわけられ、
さらに国家の介入度合いが激しいものをState Market Economicsと呼んだり、
発展途上で市場システムが確立されていないものをEmerging Market
Economicsと呼んだりします。

LMEsとCMEsはその運営のされ方に大きな違いが有り、
金融のあり方、雇用のあり方、企業間関係のあり方、など何もかもが
対照的になっています。

大筋でまとめると、LMEsでは多くのコーディネーションが競争市場で
なされます。例えば、企業のガバナンスや資金調達は株主中心になり、
労働市場は外部労働市場(企業内労働市場に対して)が優勢で、
さらに、企業間の協業よりも競争の方が中心だ、という風です。
例えば、日本のようなメーカーとそのサプライヤーが緊密に協力しあう
というのは、LMEs(典型的には旧英国領が多い。アメリカとかイギリス、
オーストラリアなど)では、非常に難しく、どちらかというと、
利益の取り合いをする関係、という方が主です(あくまで一般傾向として)

一方で、CMEsでは、多くのコーディネーションが市場以外の方法で
行われる(一般的には組織、あるいは緊密なネットワーク)のが特徴です。
企業ガバナンスにおいては、銀行や労働組合、企業内のマネジャー達の
力が優勢ですし、労働市場は内部労働市場が強く、企業内訓練が非常に
熱心に行われ、さらに、企業間の協業も盛んと。
例としては、日本やドイツ、北欧諸国などが典型的な例になります。

で、ここでポイントは、これらの仕組みは相互に補完しあっていた、
ということです。例えば、CMEsの場合、企業内労働市場中心に経営が
できるのは、景気が悪くなっても株主にレイオフを迫られることは
一つには、無いからです。それが故に、長期的に人材投資を行うことで、
一定の生産性を高めることができる、という風になっています。
さらにいえば、企業間協業にしても、相手が裏切らないという期待が
あるからこそいろんな情報を共有してリスクをともにとる訳ですが、
短期で人が入れ替わる労働慣行だと、そういった信頼の蓄積が難しい。

まあ、どちらにもいい面があり、苦手な面が有る、というのが
結論でして、LMEsは変化への対応が柔軟にできる、一方で、CMEsは
長期的な視座での経営や、企業固有能力の蓄積が得意、という
特徴が有ります。

で、ここで問題は、これらの特徴を混ぜ合わせると何が起こるのか、
ということなのです。いくつもの仕組みが複合的に相互に支えあって
パフォーマンスを出しているシステムの一部を変えるとどうなるか?
自明ですよね。パフォーマンスが下がります。
(と、いうのが、Variety of Capitalismの基本的な主張です)

で、どうも、この手の論文を読んでいて気になるのは、昨今の日本の
改革なるものが何を志向しているのか、ということなのです。
80年代末期以降の日米構造協議以来、自由化、という名の下に
色々なことが行われている訳ですが、LMEs的な方向に持っていく
ドライブが働いている気がするのです。

基本的にアメリカの仕組みを是として、日本にうまく行かないことが
あるときに、アメリカの仕組みを参照して手をうつ、ということが
多くねえか?ということなんですね。
(まあ、アメリカはそうした方が得なので、その方に誘導するのは
当然ですけどね。日本がどうするか、ということです。問題は。)
冷静に上の議論をベースに考えると、うまくいくどころか、
問題をより複雑にするのでは?という疑問が沸々とわいてくるのです。
少なくとも、アメリカに文句いわれて素直に聞く理由はねえな、
というのは言わずもがな(彼らはグローバルスタンダードと言うでしょうが
彼らが押し付けたいスタンダードに過ぎないので)

とはいえ、状況は変化するので、経済の運営の仕方を変えていく
ことは必要なのですが、だからといって、LMEs的な社会にできるか
といえば、根本的には歴史風土、文化的側面に大きな違いが有るので
どう考えてもあんまり成果が出なさそうです。
(アングロアメリカ諸国の、個人主義や、リスクテイキングといった
文化傾向は、LMEsときれいに対になってます)

と、いう訳で、日本のCMEs的な既存の仕組みと文化に根ざしつつ、
新しい制度体系を構築していかなければならないのだな、と
思った今日この頃でした。僕の専門に近い、雇用問題一つ取っても
そんな風に他の仕組みとの相互作用まで含めて考えたことが
無かったので、簡単ではないですけども。

ただ、キーになるのは、Coordinated Market Economicsだから
といって、既存の権益者を守るようにCoordinationしなければ
いけない理由は無い、ということだと思われます。例えば、
どうせ政府が介入して市場操作するなら、家電と車じゃなくて、
人口構成にあった医療福祉だろう、という野口悠紀夫氏の先日の
ダイヤモンドの記事は、おっしゃる通り、と思いますからね。
スポンサーサイト

積み上がっていくコンセプトたち。

2011年01月24日 08:39

新学期が始まって2週間が経ち、Lent Termの授業の様子が見えてきました。
そこでよくわかったのは、Michaelmas Termの授業達が非常に良い土台を
作ってくれている、ということです。

特に、Organizations in Economy and Societyです。タイトルの通り、
「社会と経済における組織」という大きなテーマの中で、主要な構成要素を
学んできた訳ですが、それらが他の授業のコンテンツを理解していく上で
非常に良い土台になっています。主要な概念をご紹介しますと、

・新古典派経済学(Neoclassic Economics 特にミクロ)
いわゆる、ミクロ経済学の定番ですが、完全市場、市場の失敗、
モノポリー(独占)、規模の経済性/範囲の経済性、サンクコスト、
参入障壁 等など。

・新制度派経済学(Transaction Cost Economics)
ノーベル経済学者、ロナルド・コースの取引費用に関する考え方を核に、
ウィリアムソンらがそれを発展させた新制度派経済学の考え方です。
そもそも企業がなぜ存在するのか、あるいは市場での取引契約や
労働契約など、様々な形態の契約、またそれらを下支えする政治・社会・
経済制度について論理的に分析する枠組みを提供してくれます。

・経済社会学 (Economic sociology)
ポドルニーらの市場をネットワークとして捉える見方や、
フリーグシュタインの市場を政治的闘争として捉える見方など、
経済現象を、人間同士、あるいは企業同士の関わりあいとして
捉え、分析する枠組みを提供してくれます。

・資源ベースの戦略論 (Resource Based View)
ペンローズを祖に、バーニー、ハメルらが発展させた、
企業を資源の集まりとして捉え、資源がどのように創出、蓄積、
蓄積、活用され、どのように競争優位性を作り出すのか、
について捉える枠組みです。知識論もこの理論に深く関わります。


今期は、The future of the multinational firmsで
多国籍企業の海外展開(特にFDI - Foreign Direct Investment
海外直接投資)について、そして、International and Comparative
Human Resource Managementでは、多国籍企業の人材管理や
国や地域による人事慣行の違い、それらをどう乗り越えていくか、
と行ったことを学びますが、全ての理屈の構築の土台として、
上記の4つの理論分野が収まっている感じです。

たとえば、海外展開においては、規模の生産性が得られるのか、
独自の資源が行かせるのか、また、異なる制度を持つ国において、
資源の強みが再現できるのか、といったことがキーになります。

あるいは、人事論においても、雇用契約、というものが契約として
どのような性質を持ち、労働者ー企業間で生じうる問題をどのように
解決しているのか、といったことや、企業内の仕組みと、
その国の社会制度、例えば労働政策や組合のあり方など、がどのように
関わるのか、といったことがテーマになります。


ちなみに、一般論として考えると、経営学を支えるもう一つの大きな
柱は心理学ですね。より詳しくいうと組織心理学です。これについては
ディサテーションでリーダーシップについて考えていくため、別途
勉強してくことになるはずです。


こういう大きな理論のビルディングブロックが自分の頭の中で
うまく積み上がっていくというか、大きな絵として整理がついた、
というのは結構大きいですね。これまでも仕事の中で(理論を知らずに)
考えていたことともつながりますし。

ちなみに、僕は経済学をやっていたので基礎の基礎は分かりますが、
もうちょっとちゃんと勉強していればもっと楽だったな、という
感覚はあります。まあ、勉強しにきているんで良いんですけど。

新学期開始!

2011年01月14日 08:03

1月10日からいよいよ新学期がスタートしました。
前にも書いた気がしますが、LSEは10月~12月のMichaelmas
Term(MT)と、1月~3月のLent Term(LT)、5月~6月の
Summer Term(ST)の3つの学期で1年が構成されています。

STは殆ど最後のテスト(MTのコースも含めて、ほぼ全ての
授業のテストがSTに行われます)と、そのためのレビュー
セッションくらいしか有りませんから、実質授業は全てMTと
LTで終了、ということになります。

つまり、もう半分近く終わったってことですね。早い!!

ちなみに、STの試験のシーズンの後には、Dissertationを書く
期間になります。8月26日が提出ですので、まあ、2ヶ月くらい
はある訳です。学部によってはもっと早いプログラムもある
らしく、例えば昨日あったアカウンティング系のプログラムに
在籍している人の話しで5月には締め切りが有るとか。恐ろしい。


さて、LTも、MTの最初の頃と同じように、コース選択が有ります。
とはいえ、基本的にはMTの最初に考えてありますので、
それほど考えることは無い訳ですが、実際に受けてみないと
Course Discriptionだけ見ていても分かりませんから、
最初の授業に一通り出て判断することになります。

僕の場合は、このThe Future of the Multinational Firms,
International and Comparative Human Resource Management,
International Business and Governanceの3つの選択肢から2つを
選択するつもりでいます。

一つ目は、多国籍企業の新興国への進出ががテーマです。
FDI (Foreign Direct Investment)に関する意思決定を捉える、
中心的な枠組み、OLI Frameworkを中心に議論が進む模様です。
レクチャーとケーススタディを核にしたセミナー、そして、
外部の講師(例えば、ゴールドマンサックスでBRICsという概念を
提唱したリサーチ部門のトップとか、そうそうたるメンツです)
の講演の3つで構成される予定になっています。

二つ目はその名の通り、多国籍企業における人事管理が中心。
この授業はProfessor David Marsdenという、昨年まで
僕たちのコアコース、Organizations in Economy and Society
を教えていた先生が担当するため、根幹になるセオリーの
接続性が高いところが魅力的な部分です。基本的には企業の
Distinctive Capability (他が持たない独自の組織能力)を
国籍を越えて実現、展開していくために、教育や配置、報酬
といった人事システムをどう構築していくか、を考えていくことに
なります。

そして三つ目は、様々な国や地域の政治/経済/社会制度が
どのように異なるのか、そしてそれがどのようにビジネスに
影響するかについて取り扱います。
このコースは珍しく、レクチャーが無く、基本的にセミナー
だけで構成されています。それだけ授業の時間は少ない訳ですが、
ケースを用いた議論が学習のコアになりますので、準備をしっかり
しておかないと得るものが希薄になりそうです。
毎回、500ワードのケース分析レポートを書いて提出する
ことが求められるため、準備をしっかりする必要があります。

と、言う訳で、いずれも魅力あるコースです。
まだ、決めきれてませんが、明日決める予定です。


それから、今週はDissertationのコースが開催されました。
自分なりの研究をどのように行うか、についてです。
まあ、これについては、殆ど議論されたことは考え済みのこと
だったりしたので、僕にとっては殆ど得るものがありません
でした。残念ながら。2週間に1回のペースで、
定性的な調査分析、定量的な調査分析、良い論文とは、
といったシリーズで授業が続く予定ですので、そちらの
内容に期待、というところでしょう。

また、最後になりますが、このタームは、
本来はProf. Niall Fergusonという非常に有名な歴史学の教授の
授業が、アセスメント無しのオープンコース的な扱いで
開催されるため、できるだけ参加しようと思っています。
基本的にはDepartment of International Historyの学生が
対象のものですが、何とか潜り込めないかと画策中です。

おそらく、MT以上に恐ろしく忙しいタームになることは
間違い有りませんが、まあ、楽しんで乗り越えていこうかと。


最新記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。